或るニートの一日 三人目
働くサラリーマンを見て呟いた。ご苦労なこった。春雄の一日が始まっ
た。いつもの食パンにジャムをつけ頬張る。うまい。朝の九時。テレビは
働く人たちの特集が流れる。働いたら負けだろ。また呟く。十時。極上の
朝風呂から出た春雄に、睡魔が襲い掛かった。いつものことだ。昼まで寝
るか。今は負けてるやつらが一生懸命働く時間だ。その中、のんびり眠れ
る今の自分だけは勝っていると思ってる。働いたら負けかなと思ってる。
十二時。窓外から降り注ぐ日差しで春雄は目を覚ました。テレビをつけ
る。タモさん。かなり眠い。だが、タモさんだけは見逃せない。コンビ二
で買い溜めしたパンとおにぎりを食べながら思う。タモさんを毎日逃さず
見る自分は勝ってると思ってる。タモさんが終わると、また布団に潜りこ
む。徹子の部屋。こうやって、好きな事が出来る今の自分は勝っていると
思ってる。いつの間にか寝ていた。五時。外を歩く子供の遊び声に目を覚
ました春雄は、また風呂に入る。坊主頭に熱湯を浴びせた。気持ちいい。
風呂は最高かなと思ってる。
六時。コンビ二の牛鮭定食と、二つのパンを食べる。六時半。春雄は部
屋でテレビをつけてゴロゴロする。十時。ゲームをする。後は彼女さえで
きれば究極勝ちかなと思ってる。二十四年間彼女はいないが、いつかはで
きると思ってる。自分の顔を鏡で見た。歳の割に老けてるかなと思ってる。
明日はテレビの取材が来る。勝ってるから無様な姿は見せたくない。カ
メラに向けて思いっきり言ってやる。世の中の職員たちよ。働いたら負け
かなと思ってる。今の自分は勝ってると思う、と。
(このお話はフィクションです)