道 1 | ◆短編ブログ小説◆

道 1

この学校を辞めることになったんだ。クラスに衝撃が走った。鬼教師。影

のニックネームだ。突然の告白に誰もが驚いた。鬼教師こと本嶋の悪逆無

道とも言える振る舞いは学校中でも有名だった。相手が小学生だという事

を利用し、生徒を怒鳴り散らし、時には血が出るまで殴りつけた。

行き過ぎている。長井修の、本嶋への不満は蓄積される一方であった。

けれど、それもあと一週間。嬉しかった。周りも表情には出さないが、目

ばかりは隠せなかった。誰もが嬉しそうな目をしている。

 


どうせなら、最後に言ってやりたい。修は思った。あの日以来、大人とい

うものが信頼出来なくなった。子供が相手だからといい気になるな。そん

な思いを。特に本嶋には。あの日受けた傷は、修の心にこれからも一生残

るものとなりそうだ。このまま終わらせたくはない。本嶋が担任でいるの

もあと一週間なんだ。最後に自分の思いを言ってやる。奴の一番大事な物

の前で奴と共に。修の計画は、着々と頭の中で進んだ。あと一週間。わず

か一週間。一年以上もの苦しみを一週間後に。修の心は燃えた。