天使 | ◆短編ブログ小説◆

天使

俺さぁ、天使と会話ができるんだよね。

こんな事を二十歳にもなって真顔で言う奴がいた。

それは忘れもしない、三年前の四月一日だった。友人を集めて、突然、奴

が言い放った一言。「九分後に震度2の地震がくる」地震は本当にきた。

真実は天使のみが知ってるんだよ。誰もが呆然とした。それからも、数々

の予言を的中させた。奴が言う天使との会話によって。奴は二十歳。大学

三年生。そろそろ就職を考えなければいけない時期に、奴は天使と共に、

国を動かすようなでかい事をやってやる、そう宣言した。ギャンブルには

無関心だった。その予知能力さえあれば大金持ちになれるだろ。すると、

双子の妹がいたんだ。奴はそう言った。ギャンブルと何の関係があるんだ

よ、と聞いたが、それ以降は全く話そうとはしなかった。


やがて、大学卒業後は奴とは連絡を取らなくなった。その予知能力があれ

ば、きっと社会でも成功だろう。そんな大学卒業から三年経ったある日、

いつものように会社から帰りドラマを見ていると、臨時速報が入った。

バーモンド州で、一人の邦人が射殺。名前を見て驚愕した。奴だ。競馬の

レースに多額の金額を注ぎ込み、その帰宅途中での事件。ギャンブルをや

るなんて。奴も変わったんだな。そんな想いを抱きながら、奴の葬式に出

かけた。事件の詳細を聞いた。射殺されたのは四月一日だった。

もしや、と思い、双子の妹の事も調べた。ギャンブルにのめり込んだ男に

よって殺されたそうだ。七年前の四月一日に。