カレーライス | ◆短編ブログ小説◆

カレーライス

小さな事件。小学生ばかり狙った連続誘拐未遂。と、今朝の新聞にはそう

説明されている。犯人は逮捕されてないうえに、近所で起こった事件だけ

に、朝から妙な不安に襲われていた。

しかし、予感とは的中するものだ。午後4時。いつもであれば、帰宅時間

なんかにこれほど神経を研ぎ澄ますことも無かったのだ。何度もドアを開

けた。息子が帰ってくる気配は無い。4時には帰ってくるんだよ、今朝あ

れだけ約束した。息子が約束を破ったことは一度も無い。早く帰ってくれ

ばいいのに。公園で寄り道でもしてるのかな。自分に言い聞かせることに

よって、何とか冷静を保とうとした。しかし、心臓の鼓動は収まるどころ

か、より一層高まるばかり。まさかうちの子が。そんな事は考えたく無か

ったが、4時を30分過ぎても帰ってこない。何もする気が起きない。

ただ、息子が無事に帰ってくればそれでいい。それだけを考えた。

 

まだ帰ってこない。午後5時。その時、電話が鳴った。「警察です。」感

じた。自分の中で何かが崩れていくのを。まさか、そんな。しかし、現実

では警察から電話が来たのだ。本当にうちの子が。「お宅の息子さん、盗

難届けが出ていた財布を届けてくれたんですよね。学校の近くで拾ったら

しくて。お母さんが心配するからと言って家に帰りたがってましたけど、

いろいろ手続きとかありまして。褒めてあげてくださいね。心配してます

から。」よかった。改めて感じた、息子の可愛さ、大切さ。今晩はカレー

ライス作ってあげよう。